借地借家

Q1.今、借地上の建物に住んでいるんですが、地主からもうすぐ契約期間が満了するので、出ていって欲しいと言われています。出ていかなければいけないのでしょうか。

 借地契約の更新には2通りあります。1つは合意更新で、もう1つは法定更新です。なお、本編において借地契約とは建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約を言います。
 合意更新とは、地主と借地人がお互いの合意により借地契約を更新することを言います。契約期間が満了する場合、通常は、合意更新により、借地契約を更新することになります。
 しかし、地主が更新に応じない場合もあります。このような場合、合意更新を成立させることはできませんから、借地人としては、法定更新により、借地契約を更新させるしかありません。
 法定更新とは、更新の合意がなくても、自動的に借地契約が更新されることを言います。
 法定更新にも2通りあります。1つは更新請求による法定更新、もう1つは使用継続による法定更新です。
 借地人は、借地期間が満了する場合において、地主に対し、更新の請求をすることができます。
 借地人が更新請求をした場合、地主が遅滞なく異議を述べないと、借地契約はこれまでと同じ条件で更新されたことになります。これを更新請求による法定更新と言います。
 但し、更新されるのは、建物が存続する場合に限ります。
 また、更新請求をしなくても、土地の使用を継続することによって、借地契約を更新することができます。これを使用継続による法定更新と言います。
 この場合も、地主が遅滞なく異議を述べないと、借地契約はこれまでと同じ条件で更新されたことになります。
 但し、更新されるのは、建物が存続する場合に限ることは更新請求による法定更新と同様です。
 いずれの場合も地主が遅滞なく異議を述べた場合は、借地契約は更新されないことになります。
 しかし、地主の異議には正当な事由が必要です。
 正当な事由とは、借地権者・地主の土地の使用を必要とする事情、借地に関するこれまでの経過、土地の利用状況、立退料等を考慮してその有無が判断されます。
 従って、あなたとしては、地主に対して借地契約の更新を請求するようにして下さい。その際、通常は更新請求をしたことを証拠として残すために、内容証明郵便で請求をします。
 また、更新請求を忘れてしまった場合は、土地の使用を継続して下さい。
 これらにより、借地契約は自動的に更新されることになります。
 地主から異議が出た場合には、正当事由の有無によって、出ていかなければいけないかどうかが判断されます。
 その結果、正当事由がないと判断されれば、あなたは出ていかなくていいということになります。
 また、出ていく場合でも、正当事由が存在するためには、立退料が必要となりますから、正当な立退料を請求するようにしましょう。
 なお、地主との交渉が難航した場合には、調停や借地非訟事件を起こして、裁判で解決することになります。

Q2.借地契約が期間満了により終了したのですが、地主から建物を取り壊して出ていけと言われています。建物を取り壊さなければならないのでしょうか。

 建物の賃貸借契約の場合、賃借人には原状回復義務がありますから、賃借人は借りた当時の状態に戻して、物件を返還しなければなりません。
 しかし、借地の場合は、借地法・借地借家法で建物買取請求権という権利が借地人に認められています。
 建物買取請求権とは、借地権の存続期間が満了した場合において、借地権者が地主に対し、建物を時価で買い取ることを請求することができる権利です。
 従って、あなたとしては、地主に対して建物買取請求権を行使して、建物の買取を請求すれば、建物を取り壊す必要はないということになります。
 なお、建物買取請求権が認められるのは、期間満了による終了の場合だけで
あって、合意で借地契約を解除した場合、借地人が地代の支払を怠ったために地主から借地契約を解除した場合には、建物買取請求権は認められません。

Q3.建物の増改築をしたいのですが、借地契約書上、「建物の増改築をする場合には、地主の書面による承諾が必要」との条項があり、地主が承諾してくれません。どうすればいいでしょうか。

 借地契約を締結する場合、契約書上、上記のような増改築禁止特約が付されることが多いです。
 この特約は有効ですから、借地人が地主に無断で増改築をしてしまいと、契約違反となり、地主から借地契約を解除されてしまうおそれがあります。
 但し、裁判例では、賃貸借契約においては信頼関係破壊理論という理論が認められており、多少の増改築があっても、それが地主・借地人間の信頼関係が破壊されたものと判断されない限り、地主による借地契約の解除は認められないということになっています。
 従って、信頼関係を破壊するような増改築でない限り、地主の承諾なくして、増改築しても、地主からの解除は認められないということになります。
 しかし、信頼関係が破壊されてたと言えるかどうかは微妙な判断であり、地主で無断で増改築をしていしまうと、紛争の種になるおそれがあります。
 そこで、このような場合は、裁判所に対し、地主に代わって増改築の許可の裁判を求めることができますので、裁判を起こすようにして下さい。
 従って、裁判所に許可をもらったうえで、増改築をすることをお薦めします。

Q4.借地上の建物を他人に譲り渡したいのですが、地主が許可してくれません。どうしたらいいでしょうか。

 借地上の建物は借地権を前提に立っているものですから、建物を譲渡するということは借地権も同時に譲渡することになります。
 そして、民法上、賃借権の譲渡の場合は、貸主の承諾が必要とされており、実際、借地契約書にも、その旨の記載があることが通常です。
 従って、原則として、地主の承諾がなければ、借地上の建物を譲ることはできないということなります。
 地主に無断で譲ってしまうと、契約違反として、借地契約を解除されてしまうおそれがあります。
 しかし、この場合も前述した信頼関係破壊理論が適用されることは増改築禁止と同様ですが、借地権の譲渡の場合、信頼関係の破壊が認められないケースはほとんどありません。
 そこで、借地権の譲渡の場合も、増改築の場合と同様、裁判所に地主の承諾に代わる許可を求める裁判を起こすことができますから、あなたとしては、裁判所に許可を求める裁判を起こすようにして下さい。
 従って、裁判所に許可をもらったうえで、建物を譲り渡すようにして下さい。
 この場合、借地権譲渡の承諾料を支払わなければならない場合があります。

Q5.私はアパートを借りているのですが、契約期間が満了したので、大家から出ていってくれと言われています。出ていかなければならないのでしょうか。

 建物の更新にも合意更新、法定更新の2通りがあります。
 通常は、大家と借家人との合意によって、借家契約を更新することになります。
 しかし、大家が更新に応じない場合もあります。このような場合、合意更新を成立させることはできませんから、借家人としては、法定更新により、借地契約を更新させるしかありません。
 借家の場合は、借地と異なり、借家契約が契約期間満了となっても更新されるのが原則です。
 従って、大家は借家人に対し、更新拒絶の通知を出さなければなりません。
 そして、この更新拒絶の通知は、契約期間満了前1年前から6か月までまでの期間に出さなければなりません。この場合も、更新拒絶の通知を出したことを証拠にするため、通常は内容証明郵便で出します。
 従って、大家から更新拒絶の通知がない限り、借家契約は自動的に更新されることになります。この場合、借家契約はこれまでと同じ条件で更新されたことになります。
 また、使用継続による法定更新が認められるのも借地契約と同様です。 これに対し、大家は遅滞なく異議を述べることができますが、正当事由が必要という点も同じです。
 正当な事由は、借家人・大家の建物の使用を必要とする事情、建物に関するこれまでの経過、建物の利用状況、建物の現況、立退料等を考慮してその有無が判断されます。
 従って、大家から更新拒絶の通知がない場合、大家からの更新拒絶の通知があっても、その建物の使用を継続しているにもかかわらず、大家から遅滞なく異議 がない場合、仮に遅滞なく異議があったとしても正当事由が認められない場合には借家契約は自動的に更新されることになり、出ていかなくていいということに なります。
 また、出ていく場合でも、正当事由が存在するためには、立退料が必要となりますから、正当な立退料を請求するようにしましょう。
 なお、大家との交渉が難航した場合には、調停や借家非訟事件を起こして、裁判で解決することになります。

Q6.賃貸アパートから引越しをしようと思うのですが、大家さんが現状回復にお金がかかると言って、敷金を返還してくれません。原状回復のうち、どこまでが借家人の負担となるのでしょうか。

 借家人は、建物を明け渡すときには、借りたときの状態に戻さなけれならない義務があります。これを原状回復義務と言います。
 しかし、借家人も家賃を払って当該建物を使用しているわけですから、借家人には通常の使用によって汚破損したものについては、原状に回復する義務はありません。
 従って、借家人が原状回復をしなければならないのは、借家人の故意・過失に基づく、汚破損のみです。
 これは賃貸借契約上、「借家人は一切の原状回復費用を負担しなければならない」とされている場合も同様です。
 また、原状回復義務は借りたときの状態に戻す義務ですから、借りる前から存在した汚破損については、回復する義務はありません。
 従って、アパートを借りるときは、物件の状況を確認し、汚破損部分があれば、写真を撮るなどして、後の紛争に備えておいた方がいいと思います。
 大家が過大な原状回復費用を請求して、敷金を返還しない場合には、調停、あるいは訴訟を提起して、敷金の返還を請求することになります。なお、請求金額が30万円以下の場合には、少額訴訟という簡単な裁判手続を取ることができます。

Q7.近隣の家賃は下がっているのに、大家から家賃の増額を請求されています。どうしたらいいでしょうか。

  家賃が、土地もしくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地もしくは建物の価格の上昇もしくは低下その他の経済的事情の変動により、又は近隣同 種の建物の家賃に比較して不相当となったときは、将来に向かって、大家は家賃の増額、借家人は家賃の減額を請求することができます。
 従って、あなたとしては、大家さんに対し、内容証明郵便で家賃の減額を請求するようにして下さい。
 当事者間で協議がととなわない場合には、裁判所に対し、家賃の減額の請求をすることができます。
 裁判所で家賃が決定されるまでは、相当と認める家賃を支払うことで足ります。
 但し、相当と思って支払った家賃より、裁判所の認定した家賃の方が高ければ、後にその差額分を支払わなければなりません。
 また、大家が家賃の受領を拒絶した場合には、法務局というところにある供託所に供託をしておかなければ、家賃不払いで賃貸借契約を解除されるおそれがあるので、供託をするようにして下さい。

Q8.アパートを貸しているのですが、借り主が家賃を払ってくれません。どのようにすればいいですか。

 まずは、借家人に対し、家賃の支払の催告及び支払なき場合は賃貸借契約を解除する旨の通知を出します。これも、解除の通知をしたことを証拠とするために、内容証明郵便で行うのが通常です。
 家賃不払解除の場合も上記信頼関係破壊理論が適用されますので、1か月2か月の家賃の滞納では。賃貸借契約の解除は認められません。借家契約の場合、通 常、3か月程度の滞納が必要となります。ちなみに、借地の場合には、これよりも期間が長く、6か月から1年くらいとされています。
 上記の結果、賃貸借契約が解除された場合には、今度は未払家賃の支払及び建物明渡の請求訴訟を起こすことなります。
 その結果、建物明渡しの判決と取って、それに基づいて強制執行を行うことになります。
 具体的には、執行官という人に明渡しの催告をしてもらい、それでも出て行かない場合は強制的に追い出すことになります。
 強制執行の最終段階まで行くと、相当な費用がかかりますが、催告の段階で出ていってくれれば、費用は安くで済みます。
 極力、執行官による催告で出て行ってもらうようにしましょう。

Q9.定期借家について教えて下さい。

 上記のとおり、借家人は借家法・借地借家法により、保護されており、大家は一旦建物を貸すと、それを取り返すことは非常に困難です。
 そこで、上記のような法定更新の規定が適用されず、賃貸借契約期間満了によって、借家契約が終了するものとしたのが、定期借家です。
 定期借家権を設定する場合は、公正証書による書面等によって契約をし、契約の更新がないこととする旨を定めることが必要です。
 また、大家は借家人に対し、予め、建物の賃貸借契約には更新がなく、期間の満了によって賃貸借契約は終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明をしなければいけません。
 そして、大家は借家人に対し、契約期間満了前6か月から1年前以内に期間の満了により、賃貸借契約が終了する旨の通知をしなければいけません。
 但し、上記期間内に通知を出せなかった場合でも、その後、通知を出せば、その通知の日から6か月を経過することにより。賃貸借契約は終了します。
 定期借家の場合、通常の賃貸借契約と比べて、家賃が安いことが多いですが、期間満了により、建物を明け渡さなければならないことを覚悟しておいて下さい。