刑事

警察に身柄を拘束されている人に面会したいのですが,どうすればいいですか?

 警察に身柄を拘束されている人に面会することを「接見」といいます。接見は,「接見禁止」になっていない限り,誰でもできます。ただし,一般の人が接見できる時間帯は,平日の昼間(警察署によって運用が異なるかもしれませんが,通常は,受付時間が9:30~11:00,13:00~16:00)に限られ,一回の接見時間は15分程度です。接見は警察署の接見室で行われ,警察官の立ち会いの下で行われます。接見室は通常1部屋,多くても3部屋程度しかありませんので,順番待ちになることが多いのが実情です。
 なお,接見禁止になっている場合でも弁護人は接見することができます。また,土日や夜の面会も通常は可能です。

身柄拘束はどのくらいの間続くのですか?

 身柄拘束は,逮捕→起訴前の勾留→起訴後の勾留というように進んでいきます。簡単に言うと,逮捕は3日間,起訴前の勾留は10日または20日,起訴後の勾留は無罪または執行猶予の判決が言い渡されるまで続きます。起訴後の勾留については,「保釈」という制度があり,保釈請求が認められれば身柄拘束が解かれることになります。逮捕と起訴前勾留については,「保釈」はありません。したがって,基本的には,逮捕や勾留期間が満了するまで待ったうえで,起訴されてから保釈を請求することになります。ただし,起訴前勾留については,「勾留の執行停止」という制度があり,例えば急病や身内の葬式などの場合に一時的に身柄拘束が解かれる場合があります。また,勾留という処分そのものの取り消しを求めることもできますが,認められる可能性は極めて低いのが現状です。

保釈とは何ですか?

 保釈とは,保証金の納付等を条件として,勾留の効力を残しながらその執行を停止し,被告人の身柄の拘束を解く制度です。起訴後のみで,起訴前には保釈制度はありません。保釈請求は,裁判所に対して行います。実務上は,保釈請求書という書面を提出します。保釈を許可するか否かは裁判官が決定します。本来,保釈は,請求があれば原則として認められるものですが,実務上は保釈が許されない例外事由が広く認められてしまうのが実情です。実際に,保釈率は,平成14年度の司法統計によると,地方裁判所でおよそ5割程度です。保釈請求は,被告人本人ができるほか,配偶者や直系親族なども行えますが,弁護士に相談した方がよいでしょう。また,保釈されるためには保釈保証金の納付が必要です。この保証金は逃亡したり公判期日に出頭しなかったりした場合に没収されることがありますが,そのような事情がない限り,判決言渡し後に戻ってきます。保証金の決定方法については,後述します。

保釈請求はどういうときに認められるのですか?

 保釈が認められるのは,(1)起訴後において,(2a)保釈不許可事由がないとき,又は(2b)裁判官が適当と認めるときです。これら以外に,不当に長い勾留の保釈があります。
 保釈不許可事由は,次の6種類があり,これらのうち一つでも該当すれば保釈は許可されません。ただし,保釈不許可事由があっても,裁判官が適当と認めれば許可される場合もあります。
[1]被告人が死刑又は向き若しくは短期一年以上の懲役若しくは禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
[2]被告人が前に死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮に当たる罪につき有罪の宣告を受けたことがあるとき。
[3]被告人が常習として長期三年以上の懲役又は禁錮に当たる罪を犯したものであるとき。
[4]被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。
[5]被告人が,被害者その他事件の審判に必要な知識を有すると認められる者若しくはその親族の身体若しくは財産に害を加え又はこれらの者を畏怖させる行為をすると疑うに足りる相当な理由があるとき。
[6]被告人の氏名又は住居が判らないとき。
 [1]~[3]と[6]については,これに当たるか当たらないかは比較的簡単に判ります。問題は[4]と[5]です。特に[4]は実務上広く認められる傾向にあります。この辺りが保釈がなかなか認められない理由になっていると言われています。上記[1]~[6]のいずれかに該当しそうな場合であってもあきらめてはいけません。保釈不許可事由があっても,裁判官が適当と認める場合には保釈が許可されますので,裁判官を説得することを試みてください。
 なお,保釈許可決定は,保釈保証金の納付があった後でなければこれを執行することができないとされていますので,保釈の許可が出そうな場合には,すぐに保証金の支払いができるように準備しておきましょう。
 また,いったん保釈されても後で取り消される場合もあります。裁判には必ず出頭し,裁判所が定めた条件をきちんと守りましょう。

保釈請求のポイントを教えてください。

 法律のたてまえから考えれば,保釈の例外事由(刑事訴訟法89条各号)に該当する事情がないことを丹念に説明し,併せて,刑事訴訟法90条の裁量保釈を求めて逃亡のおそれがないことなどを主張することになります。ですが,ここではあえてポイントを絞って解説します。
 まず,執行猶予が見込める事案であることが前提です。実刑になることが確実な場合には,保釈はまず無理と考えてください。執行猶予が見込める事案では「執行猶予になるんであれば今のうちに釈放してもいいだろう。」と裁判官は考えますし,実刑が見込まれる事案だと「『どうせまじめに裁判に出頭しても実刑になるんだったら保釈されているうちに逃げてしまえ。』と被告人が考えて保釈中に逃亡する可能性が高い。」と裁判官が考えがちだからです。
 また,刑事訴訟法89条各号の保釈例外事由にぴたり該当する事情がある場合にはそれだけでアウトですのでご注意ください。
 現実には,保釈を許可するかしないかを決定するにあたって裁判官がもっとも気にする点は,「この被告人をここで釈放して,後の裁判のときにちゃんと出頭してくれるだろうか?」という点だと言われています。したがって,「ここで被告人を釈放しても,後で行われる裁判にはちゃんと出頭しますよ」ということを裁判官が納得できるように説明する必要があります。
 例えば,定職があること(もちろん普段からまじめに働いていることが前提です。),家族がいること(家族仲が良いことが前提です。妻子がいることも逃亡のおそれがないという安心感につながるでしょう。),信頼できる身柄引受人がいること(複数いればベターです。また,昼の監督者と夜の監督者を別々につけるなど,四六時中被告人を監督できる状況が必要です。),保釈保証金を没収されると被告人にとって痛手になること(被告人自身が保証金を負担する場合には特に問題にはなりませんが,被告人以外の者が保証金を負担する場合には注意が必要です。),被告人が外国人の場合には保釈中に出国しにくくすること(パスポートを第三者に預けるなど。)などなど枚挙にいとまがありませんが,これらの事情が多ければ多いほど裁判官は納得しやすくなるでしょう。また,事案に応じていろんな工夫が考えられると思います。このあたりの工夫は,経験豊富な弁護士が得意とするところですので,不安な方は弁護士に相談されるとよいでしょう。
 なお,被害者がいる犯罪では,保釈中に被害者に「お礼参り」や自分に有利な証言を強要したりするのを裁判官がおそれる場合もありますので,この点のケアが必要な場合もあります。
 なお,裁判官との面談は必ずしてください。そして,面談の際には入念な準備をしてください。具体的には,身柄引受人の同行や,各種添付資料の携行,保釈保証金の支払いの準備などです。裁判官との面談の際に,保釈が許可されるか否かの手応えがだいたいわかります。面談後すぐに保釈許可決定がでる場合もあります。保釈が認められる場合には,保釈保証金の金額の話が出ると思いますので,事前にいくらくらいなら支払えるのか検討しておきましょう。保釈請求の際には被告人の経済状況を証明する資料を保釈請求書に添付しておくとよいでしょう。

保釈保証金の相場を教えてください。また,保釈保証金は戻ってくるのですか?

 そもそも保釈制度は,正当な理由がなく出頭しないときに保釈を取り消し保証金を没取するという心理的な強制の下に被告人の出頭を確保しようとする制度です。したがって,保釈保証金の額は,いろんな事情を考慮して被告人の出頭を保証するに足りる相当な金額でなければならないとされています。端的に言えば,「逃げたら保釈金が没取されてしまうが,それは困る。だから逃げないでおこう。」と被告人に思わせるために保証金というものがあるのです。ニュースなどでお金をたくさんもっている人の保証金の額が非常に高くなっているのをよく聞きますが,その理由はまさにこれです。
 そういうわけで保証金の額はケースバイケースであり相場はないというのが建前になってしまいますが,実際のところは,通常の事件で資産も通常の人では150万程度だと言われています。これより低くなることはまずないと考えてください。
 なお,保釈保証金は常に先払いで,これを支払って初めて保釈が執行されます。実際には,裁判所で納付の手続きを行った後,裁判所から検察官に連絡が行き,さらに検察官から警察署等に指揮書が届いて初めて外に出ることができます。保証金納付から保釈執行までのタイムラグがどうしても数時間はかかってしまいます。
 保釈保証金は,判決言渡し後に戻ってきます。払い戻しを受けるには還付の手続きが必要です。ただし,被告人が保釈中に正当な理由なく出頭しなかったり,裁判所の定めた条件に違反したときなど,所定の場合には保釈が取り消され,保証金が没取されます。当然ですが,没取された場合にはもはや保証金は戻ってきません。

執行猶予とは何ですか?

 裁判所が刑の言い渡しをする場合に、一定の条件の下に、一定期間、その刑の執行を猶予する制度を刑の執行猶予といいます。
 例えば、「被告人を懲役1年6月に処する。この裁判が確定した日から3年間その刑の執行を猶予する。」という判決の言い渡しがあった場合、これは、「本来なら刑務所に1年6か月間入って作業に従事するところを、3年間猶予していったん社会に復帰させ、その間悪いことをしなかったときには刑務所に行かなくてすむ。」という意味です。したがって、執行猶予が付くのと付かないのでは極めて大きな違いがあるわけです。
 初度の執行猶予は、裁判所が情状により付することができますが、一定の条件があります。3年以下の懲役もしくは禁固又は50万円以下の罰金の場合に限られます。したがって、例えば懲役5年に執行猶予はつけられません。
 また、前に禁固刑以上の刑に処せられたことがないこと、又は、前に禁固以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日などから5年以内に禁固以上の刑に処せられたことがないこと、が必要です。
 もちろん、これらの条件をクリアしても、「情状」が悪ければ裁判所は執行猶予をつけないこともあります。
 前に禁固以上の刑に処せられたことがあってもその刑の執行を猶予された者については、再度の執行猶予という制度がありますが、その条件はかなり厳しいものになっています。
 執行猶予期間中に保護観察に付される場合があります。具体的には保護観察所や保護司さんの監督に服するわけですが、条件を守らないと執行猶予が取り消されて刑務所に入ることになってしまうのでくれぐれも注意してください。
 執行猶予期間中に悪いことをしたら執行猶予を取り消される場合があります。例えば、禁固刑以上の刑に処せられた場合には、執行猶予は必ず取り消されます。執行猶予期間中は身を慎み悪いことをしないよう注意してください。